vol.286 グループ法人間での経済的利益の供与
こんにちは。
東日本大震災の被災に係るニュースが減り、芸能人が亡くなったとか、小沢がどうだとか、平常時のニュースが増えてまいりました。ニュースだけではなく日本経済も早く復興させなければなりません。我々中小企業も、逆境に負けずに頑張りましょう。
さて、法人税では、いわゆる「グループ法人税制」というものが導入され、完全支配関係のある法人間(100%親子会社とか、同一株主が複数の会社を持っているとかですね)での取引については、時価課税ではなく簿価課税とし、その法人グループの外に移行する取引があった時に時価で課税するとされました。これは法人グループ内での意図的な利益の移転(赤字法人に利益を付け替えて法人税を下げるなど)を防ぎ、法人税の課税回避を阻止する目的によるものです。
たとえば子会社が負担すべき家賃を親当社が負担した場合、その金額は親会社の寄附金に該当することになりますが、子会社においてはその費用(家賃)と受贈益(親会社に負担してもらったことによる経済的利益)が相殺され、所得金額に影響がないことから、あえて両建て処理を行わないこととしても法人税法上問題はありませんでした。
しかし、平成22年度のグループ法人税制改正において、法人による完全支配関係がある内国法人から受けた受贈益については益金不算入(グループ内なので益金に計上せずとも良い、ということですね)とされたことから、子会社が親会社から家賃などの経済的利益を受けた場合には、その家賃の額を損金に算入するとともに同額を受贈益として益金に算入し、またその経済的利益が親会社において寄附金に該当するときは、その家賃相当額の受贈益は子会社において益金不算入とされ、益金不算入の処理が必要になりました(法人税基本通達4-2-6)。
また、親会社においても寄付金の損金不算入の処理が必要となりました。
グループ法人税制では、同じグループ内でA社→B社→C社→D社と資産や経済的利益が移転していく場合、このグループ法人税制の適用範囲内か否かで、大きく法人税額が変わってまいります。従いましてグループ内の法人同士で、対象資産の移動内容を書面で追跡していかないと、気づかぬうちにグループの外に資産が移転し、時価課税される事態もあり得ます。今後は注意が必要ですね。
2011年4月20日号(286号)
このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。